Profile
切り絵作家 石井一臣
石井氏は幼い頃から織物のデザインに興味を持っていましたが、1968年、偶然にも切り絵の存在を知りました。その魅力に取りつかれた石井氏は、教えを乞う師もないまま独学で広重の木版画を手本に、特にその筋彫りを学び、独自の技法に到達しました。石井氏の作品に見られる江戸伝統彫りの妙は、そんな研究の賜物と言えるでしょう。
色彩もまた紙でと、相応しい手漉和紙 (てすきわし)を全国に求め、埼玉県・小川和紙を得て自ら染にあたりました。石井氏の絵に見られる温かさは、その人柄と共に光を吸収する手漉和紙を用いているからでもあります。
石井一臣氏は日本を代表する切り絵作家です、昭和43年より切り絵の創作に取り組み、小川和紙を使用した独自の切り絵の世界は、日本のみならず、アメリカ・シアトルを初め、欧米での30回以上の古典を通じ、高く評価されています。
石井氏の作品はどれも暖かく、気品があり、風景画においても切り絵でなければ出し得ない、風格が発揮されています。特に円空仏の一蓮の作品は、紙を素材とし、筋彫りの妙技を持つ石井氏の手によってのみ表現しうる境地と高く評価れています。
バンクーバーのコレクター、「リー・ライト」曰く、
Ishii is Oh contemporary HIROSHIGE!(石井はまさに、現代の広重だ)
略歴
昭和18年(1943年)群馬県桐生市に生まれる。
昭和43年(1968年)からきり絵の制作を始め、昭和56年(1981年)カナダ・バンクーバーアーティスト協会の招待によりペーパーフェアに参加。
昭和57年(1982年)西ドイツ(当時)フランクフルトにて、ヨーロッパで初めての切り絵展を開催。
アメリカ、カナダ、フランス等で30回以上の個展を開催し、平成7年(1995年)には、埼玉会館で埼玉県主催の個展を開催、170点を展示し、好評を博す。
その後、海外・川越市・秩父市・八潮市・越谷市・岩槻市・伊奈町・小川町・群馬県など各地で個展を開催。
同氏は、埼玉県特産の小川和紙を使用し、埼玉県など日本各地の伝統的な文化財や風景などをモチーフに数多くの作品を創作し、遺作として沢山の作品を遺す。
平成17年(2005年)12月5日午後2時56分(62歳)にて永眠する。